2020年10月29日 公開
「雪の重みで屋根が壊れてしまった」
「雪解け水で雨漏りした場合は雪害になるの?」
このような疑問を持つ人は多いです。
雪は日本海側を中心に11月から3月にかけて降り積もる気象現象です。
九州・沖縄地方では積もることはほとんどありませんが、東北・北陸地方や北海道では毎年積雪が記録されています。
そのため、人によっては身近な存在となっています。
そんな雪ですが雨と違い一度降ったらその場に留まり続けるため、重さで屋根や車庫が壊れてしまうことがあります。
また、雪解けの季節になると雪解け水が発生し、雨漏りに繋がるといった被害も確認されています。
雪による被害を補償する損害保険とは一体何でしょうか。
今記事では雪害に注目して、被害の内容と補償について解説していきます。
目次(▼タップで項目へジャンプします)
▼ 「雪害」とはどんな被害?
▼ 雪害の補償内容
▼ 雪害発生時の火災保険の申請方法
▼ 雪害発生時のまとめ
「雪害」とはどんな被害?
雪害とは雪によって引き起こされる住宅や設備への被害を指す言葉です。
気象学上の雪は雨が凝固した物の総称であり、雨や雹と本質的には違いがありません。
しかし、損害保険で考えるときは被害の特徴が異なるため、雨や雹と別の災害として考えます。
今記事においても雪と雨、雹については別の災害として考えます。
雪害の特徴は、雨や雹と違い積もってしまうと雪解けの季節まで残ってしまうことです。
雨や雹は長くても数日程度で流れてしまうため、被害の発見や修繕が容易におこなえます。
しかし、雪は長ければ半年ほど残ってしまうため、被害の発見が遅くなってしまいます。
また、修繕をおこなうにも雪が邪魔となってしまい、スムーズな修繕がおこなえないという問題もあります。
時間差で気づくということもあって、被害が大きくなりがちということも重要です。
このように雪害の特徴としては、長期間残ることによる被害発見の難しさや問題が拡大する可能性が高いことがあります。
雪害の被害については大きく2つの種類に分けられます。
雪害の被害について、それぞれの特徴を見ていきましょう。
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雪自体による被害
雪害として第一に雪自体による被害があります。
雪は雨が安定した状態であるため、一か所に留まり続けます。
そのため、建物の屋根や雨樋の上に積もることで重さによる負荷が掛かり、破壊してしまう可能性が高いです。
雨樋は元々雨を建物下部に流すために設置するものであり、雪のように物体が長期間とどまることを前提に作られていません。
そのため、重さによる破壊や内部に詰まった雪が原因の被害が多く発生します。
雪かきをおこなう際は、雨樋に注目することを忘れないようにしましょう。
また、雪は外壁の半分程度の高さまで積もってしまうことも多いです。
雪におおわれた外壁は水に濡れている状況となります。
水濡れによる被害としては壁の変色が挙げられ、場合によっては外壁が腐食する可能性もあります。
このように、雪がその場に留まることによる被害が、雪害の中でも大きな割合を占めます。
雪解け水による被害
雪害の被害として代表的なものに雪解け水による被害があります。
雪解け水は冬の間に積もった雪が気温の上昇で溶けだし、溶けた雪が水となって屋根や外壁に染み出してしまうことで被害が発生します。
本来は雨漏りの原因となる亀裂や損傷は見つけやすい部類の被害です。
しかし、雪で建物全体がおおわれることで発見が困難になります。
特に雪の重さによる亀裂は解けるまで発見が困難であり、秋口に異常がなくても春先に雨漏りが起きることもあります。
雪解け水は突然の被害に繋がりやすく、対応が遅れてしまうことが多いです。
雪害の補償内容
雪害の補償は原則火災保険でおこないます。
日本では個別の自然災害に対する保険が少なく、総合的な補償をおこなう火災保険で対応することがほとんどです。
しかし、火災保険の中には雪の被害について明記がないものも存在し、必ずしも対応可能であるとは限りません。
普段雪の降らない地域である九州・沖縄地方や太平洋側では、雪害に対応する特約がないこともあります。
事前に契約内容を確認し、雪害の被害が予想される場合には契約を変更することが重要です。
火災保険は支払いまでに審査をおこなう必要があります。
その際に、建物の管理者側に大きな過失が認められた場合、保険が支払われない可能性があります。
これを瑕疵と呼び、損害保険が支払われない代表的な理由のひとつです。
雪害は長期的に降り積もった雪の重みで建物が損傷することが多く、定期的な雪かきをおこなうことで防げる場合があります。
そのため、瑕疵が問われやすく保険料の支払いがおこなわれないことがあります。
対策としては定期的な雪かきの実施や行政側から指示された安全対策をおこなうことが重要です。
このように雪害は火災保険で補償されにくい被害であり、正確な知識が求められます。
雪害の特徴としてあわせて覚えておきたいことに火災保険の適用範囲と瑕疵の条件があります。
火災保険の適用範囲
雪害として火災保険で補償をおこなうためには、被害の原因が雪であることを証明すること以外にもう1つポイントが存在します。
そのポイントは火災保険の適用範囲です。
火災保険は原則建物に与えた被害を補償する保険であり、別途契約することで建物以外の家財も保険の適用となります。
そのため、雪による被害であっても建物と家財以外は対象になりません。
火災保険における建物と家財の定義は下記のものが一般的です。
建物:住宅本体および住宅に付帯する設備を指す、設備については必ず地面に固定されていて簡単に動かせないものとする。
代表的な設備としては下記が挙げられます。
- 倉庫や物置
- 車庫
- カーポート
- 地面に固定されている設備
- 門やブロック塀
家財:生活に必要な物品のうち、簡単に移動ができない設備を含むものを指す、車両といった保管場所が建物内に含まれないものは除く。
代表的な家財としては下記の物品が挙げられます。
- 家具
- 家電
- 衣類や寝具
- 自転車を含む軽車両
- その他生活必需品
どちらも生活に必要な設備や物品で、雪の被害を受ける可能性があります。
雪の被害を受けた場合は、原因と被害対象に注目することを忘れないようにしましょう。
施工不良が認められるケースも存在する
火災保険で雪害の申請をおこなうときに、注意したいものにソーラーパネルがあります。
ソーラーパネルは太陽光で発電することが可能な設備であり、火災保険の補償対象である建物に含まれる住宅設備です。
ソーラーパネルは太陽光を集める箇所に設置するということもあり、多くが建物の屋根に設置されます。
しかし、屋根は雪の被害を大きく受ける箇所の代表であり、ソーラーパネルも例外ではありません。
雪の重みでソーラーパネルが故障した、割れてしまったという被害が相次いで報告されています。
その際に、火災保険の適用より前に確認したいのが施工不良です。
ソーラーパネルは屋根に設置するという性質上、雪や強風による被害を想定して作られています。
仮に過去に例のない積雪被害や強風被害によってソーラーパネルが壊れた場合、「施工不良」でメーカーや販売会社へ費用を請求することは難しいです。
しかし、設置の際に想定できる程度の被害で故障した場合は施工不良の可能性が高いです。
雪害被害の中でもソーラーパネルは事前に想定することで対応可能なことも多いため、故障の被害に遭った場合は一旦調査をおこなうことも重要です。
屋根や雨樋も新築に近い状態では施工不良の可能性が考えられます。
特に雪害が予想される地域では事前に雪の重みで壊れにくい構造にするといった対策がおこなわれているため、簡単に壊れないことが多いです。
施工不良の場合は火災保険が適用されないため、必ず確認することをおすすめします。
雪害発生時の火災保険の申請方法
雪害は台風や洪水といった被害と違って、発見が遅れるケースが目立ちます。
そのため、申請までの時間が短く対応が難しい傾向があります。
季節性のある自然災害であり、業者の確保が難しいといった条件も相まって、申請の難しさはかなり高いです。
申請するとき戸惑わないように、今回は実際の流れを確認していきます。
事前準備
事前準備として、火災保険の契約内容の確認をおこないます。
雪害は地域性のある災害のため、九州や沖縄地方では補償に含まれていないことも多いです。
そのため、雪害の無い地域から引っ越して火災保険をそのまま再契約した場合に、雪害が補償の対象に含まれていないことが考えられます。
雪害は11〜3月までの5ヶ月間に被害が集中するため、10月より前には確認しておきましょう。
あわせて契約書や約款、住宅の情報が記載されている施工図も確認しておくことも重要です。
たいていは損害保険会社と共有していますが、もし足りないときにあわてて資料を探すといった自体にならないように事前に用意しておくことがおすすめです。
被害の発生直後
雪害の発生時は重さによる屋根や雨樋の破壊、もしくは雨漏りの発見で気づくことがほとんどです。
屋根や雨樋の破壊時は住宅内部まで雪が侵入する可能性が高いため、ブルーシートといった補修材で応急処置が必要です。
穴や亀裂をふさぐ程度のため、発見直後にその場でおこなうようにしましょう。
応急処置が終了した後は、被害内容を損害保険会社に報告します。
最近では各社24時間対応可能なオペレーティングシステムを設けているため、まずはそちらに報告することになります。
その後、担当者に連絡し、被害状況の確認と今後の流れにしたがって対応をおこないます。
補修業者への相談と見積もり
雪害被害の報告後は補修業者の選定と見積もりをおこないます。
補修業者は雪害の被害が詳しい会社が好ましいため、必ず雪害の経験がある業者を選ぶようにしましょう。
季節性のある被害のため、なかなか業者が決まらないことも考えられます。
その場合は損害保険会社を経由してもらったり、市役所といった行政機関を経由して紹介してもらったりすることもおすすめです。
業者選定後に見積もりの依頼をおこないます。
見積もりは保険会社に提出し審査の基準となるため、できる限り詳細に記載してくれる業者がおすすめです。
申請書類の作成
申請書類は損害保険会社ごとにフォーマットが異なります。
そのため、事前にダウンロードページを確認しておくとスムーズに作成が可能です。
被害状況の確認で写真を添付する必要があるため、被害発生直後に写真撮影をおこなうこともおすすめです。
被害状況によっては行政が発行する罹災証明書を求められることもあります。
建物の倒壊といった大規模被害が発生した場合は、行政が発行する罹災証明書が必要となり、発行までには約1ヶ月程度の時間がかかることもあります。
大きな被害が発生した際は、すみやかに申請することが重要です。
罹災証明書がある場合は各種補助金の交付、助成制度の利用が可能となるため、必ず申請をおこないましょう。
審査と保険金の支払い
必要書類の送付が終われば損害保険会社にて審査がおこなわれます。
審査の結果、保険金の支払いが認められた場合はお金が振り込まれます。
審査から振り込みまで1~2週間の時間を要することもあるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。
また、審査の結果、保険金の支払いがおこなわれない可能性も存在します。
その際は実費負担での補修工事となるため、色々と前提が異なる可能性が高いです。
保険金の支払いがおこなわれるまでに補修工事を開始してしまった場合は、全額費用負担をおこなう必要があるため注意しましょう。
可能であれば、保険金の支払いが決まるまで工事を開始しない業者に補修工事を依頼してください。
補修工事
補修工事は被害内容によって異なりますが、半日~2週間程度に収まることが多いです。
工事タイミングによっては積雪が続いている環境下で工事がおこなわれるため、事前に雪対策をおこなう必要があります。
また、申請内容以外の工事をおこなう際は実費負担となってしまうため、事前に打ち合わせをするようにしましょう。
補修工事後も、積雪によって再び雪害が発生する可能性も想定されるため、補修箇所を定期的に確認することが重要となります。
季節性のある被害であるため、制約等厳しい面もありますがすみやかな対応ができるように意識することが重要です。
雪により雨樋などが破損した場合は火災保険が適用できないか確認しよう
雪害は季節性、地域性の高い自然災害のひとつです。
特に雨樋のように建物外部に取り付けられた部分に被害を受けやすく、積雪が降り積もる中での補修は簡単ではありません。
雪害を確認できた場合、必ず火災保険で対応できないかを確認するようにしましょう。
その場合は、施工業者の選定や申請書類の作成に時間を取られないように事前に対応を確認しておくことがポイントです。
今記事がこれからの季節増えると考えられる雪害に、スムーズな対応ができるように活用してもらえると幸いです。
記事監修
![]() 【二級建築士】佐野 広幸 全国建物診断サービスのwebサイト監修の他、グループ会社の株式会社ゼンシンダンの記事も監修。火災保険申請を利用した修繕工事を広める事により、日本の「建物老朽化」問題の解決に貢献。 |