2020年4月4日 公開
新しく不動産を購入・賃貸する際には、住宅用の火災保険に加入することがほとんどです。住宅ローンを組むためには、火災保険への加入を義務付けている金融機関も多いため、ほぼ義務化されているといってもいいでしょう。この住居用の火災保険とは別に、店舗や事業所として使用とする建物用の火災保険というものがあります。事業用資産を幅広く補償する店舗総合保険が一般的で、加入するメリットがたくさんあります。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛が続く中、店舗は難しい局面に立たされていますが、今こそ店舗の保険について検討する時間ともいえます。
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新型コロナウイルスについて
世界中で感染が確認されている新型コロナウイルス、Covid-19は、日本の経済活動に大きな影響を与えています。特に、東京都は外出自粛が強化されているため、多くの飲食店を中心に店舗を訪れる人が極度に少なくなっています。また、イタリアやアメリカなどでは近年まれにみる犠牲者が出るなど、世界経済の停滞及び株価の暴落も起こっています。日本では、感染経路の不明な患者が増加している地域が発生し、全国的な“大”感染はギリギリのところで踏みとどまっている状態ですので、今後さらなる感染爆発が発生すると、大規模かつ長期的な流行につながる可能性もあり、油断を許さない状況が続いています。
政府は、新型コロナウイルスに関する状況を的確に把握し、国や地方自治体、医療関係者、専門家、事業者を含めた国民と共に新型コロナウイルス感染症対策を更に進めていく方針を打ち出していて、店舗を経営する企業への支援策も発表しています。ちなみに、2020年4月3日7時時点で、日本国内における新型コロナウイルスの感染者は2,617例となっています。残念ながら死亡者は65名に達しています。また、症状が回復した退院者は505名となりました。
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感染症対策の方法
ここで感染症対策の方法を紹介しておきましょう。
●咳エチケット
咳やくしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチまたは袖を使って、口や鼻を押さえて、飛沫が飛び散らないようにすることです。特に、電車や職場、学校など人が多く集まる場所では実践することが推奨されています。
●手洗い
人が感染症に罹患する要因の多くは、手に付着したウイルスが物に付着し、そこからまた手を介して鼻や口、目から体内に入ることといわれています。多くのウイルスは、電車のつり革や手すり、エレベーターボタンやドアノブなどを介して手から手へと広がっていきます。これがつながり感染拡大のきっかけとなるので、手は見た目に汚れていなくてもきれいにしておくことが重要です。石けんと流水を使って、手洗いをきちんとする習慣をつけることが感染対策の基本中の基本といえます。
●うがい
うがいは、繊毛運動をする喉本来が持つ防御機能を高めてくれますし、物理的な洗浄効果も見込めます。さらに、うがい薬を併用することで、殺菌効果により口腔やのどが清潔になります。喉の粘膜機能の回復・活性化に伴い、口腔を介する感染の予防が期待できます。
●「3密」を避ける
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都と周辺3県、政令指定都市の首長による緊急のテレビ会議が2020年4月1日に開催され、集団感染につながる「3密(密閉した場所、人が密集する場所、人が密接になる場所)」を避けること、休日だけでなく平日の夜間の外出自粛を求める共同メッセージを発表しています。
特に最後の「3密」の回避により、外出自粛が進み店舗経営者は大きな打撃を受けることになりました。今後もこの自粛要請が継続すれば、店舗はさらに経営的にきつい状況に追い込まれることになるでしょう。だからこそ、このタイミングに店舗を守る保険についておさらいをしておきたいところです。
店舗用の火災保険「店舗総合保険」
店舗・事業所用の火災保険である店舗総合保険。この保険の補償の対象になるのは、家事や自然災害により被害が出た店舗や事業所、それらに併設している建物です。一般住宅用の火災保険同様、補償対象となるのは建物だけではなく、什器・備品・機械・設備や商品・製品・原材料なども含まれ、これらの中からどれを保険の対象にするかを選ぶことができます。ちなみに、この保険の契約時に建物のみを補償の対象にすると、什器や機械などに被害が出ても保険金はおりません。できれば、補償対象になるもの全部について保険をかけたいところです。
店舗総合保険は、住宅用の火災保険と同様の原因による補償が受けられます。火災・落雷・爆発など火に関する被害のほか、風災・雪災・雹災・水災などの自然災害から盗難や水濡れ、外部的な事故などもカバーしています。当たり前の話ですが、被害に遭うリスクは店舗も住宅も一緒ですので、店舗総合保険に加入しておくことをおすすめします。
保険金は、契約金額と保険価額に応じて決定します。この保険価額とは、損害が生じた時の保険対象の価値のことで「時価」とも呼ばれます。時価とは、被害に遭ったものと同等のものを再取得するために必要な金額のことで、新品を手に入れた時からの経過年数により減価や消耗分を差し引いた金額で算出されます。保険の対象によっては、価額協定保険特約という新価(新品でそろえる時に必要な金額)を基準とする補償をオプションでつけることも可能です。
このように、損害額は時価を基準に算出するのが一般的ですので、再調達するのに必要な金額に満たないケースもありますが、修理することで復旧できる時は、修理代の全額を店舗総合保険で賄える可能性があります。
火事や自然災害による被害の場合は、修理費用を店舗総合保険で賄うことになります。では、、盗難の場合(オプションでの契約になることが多いです)はどのような補償がなされるのでしょうか。
● 保険の対象が家財・設備・什器等の場合
家財の場合は「生活用」として、設備・什器等の場合は「業務用」として使用される現金・預貯金証書が支払対象となります。
● 保険の対象が商品・製品等の場合
支払い対象にならないので、保険金はおりません。
このように、契約時にどこまで保険をかけるかをしっかり検討して加入することが、安心できる補償となりますので、納得がいくまで保険会社の担当者と詳細をつめる必要があります。
保険金が支払われない場合
店舗総合保険は、かなり幅広い被害について補償してくれますが、もちろん保険金が支払われない場合もあります。それは、以下の場合です。
●契約者や被保険者もしくは法定代理人が故意で損害を出した場合
●重大な過失または法令違反があった場合
●契約者または被保険者が所有・運転する車両が衝突したり接触したりした場合
また、火災自体の被害は補償されますが、その際に起こった紛失・盗難は保険の対象から外れています。また、家財や設備・什器等、商品・製品等を「屋外」に置いている時の盗難は対象になりませんし、自転車や原動機付自転車のような持ち出しが容易な家財の盗難も対象にはなりません。加えて、あってはならないことですが、戦争や武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱などの事変・暴動による被害や核燃料物質に起因する事故も対象から外れています。
店舗損害保険で注意が必要なのが、地震が起こった時です。住宅用の火災保険の場合は、地震保険をセットで契約することで地震が原因の火事や津波の被害が補償されます。この地震の扱いは店舗総合保険も同じで、地震保険に加入していない場合は地震・噴火・津波に起因する火災・損壊・埋没・流失が起こった場合は補償されません。日本は世界的に見ても地震国家として知られていますので、地震保険をセットで加入(火災のみオプションで加入が可能…後述します)することをおすすめします。
また、以下の場合も保険の対象から外されます。
●保険の対象となる箇所が明らかに欠陥している場合(契約者や被保険者が相当な注意をしても発見できないような欠陥は除く)
●自然な消耗や経年劣化による変色・変質やさび・かび・腐敗・腐食・浸食、ひび割れ・剥がれなど
●ねずみ食い・虫食い
●日常的な使用により生じると考えられるすり傷やかき傷、塗料の剥がれ落ちなど
●テロ行為や情報(プログラムやソフトウエア、データ)のみに生じた損害
●掛け金の受け渡し前に生じた被害
店舗向け火災保険のオプション
住宅用の火災保険と同様に、店舗総合保険にもいろいろなオプションがあります。ベースとなる基本補償だけでは不安な場合は、オプション契約をしておくことも検討しましょう。
地震火災補償特約
住宅の火災保険における地震保険に近いオプションで、地震・噴火・津波が原因で発生した「火災による被害」を補償するものです。店舗総合保険の契約金額の30~50%の間で設定されるのですが、居住併用住宅ではこの特約をセットにできないので、住宅用の地震保険に加入することになります。
ビル総合・破損危険補償特約
いたずらや破壊行為によるガラスの破損や建物の損害を補償するオプションで、エレベーター・空調設備など建物の付帯設備の電気的・機械的事故の補償まで含めるかどうかも選択できます。自己負担額(免責金額)の設定もできます。
事務用機器補償/設備・什器等総合補償特約
設備・什器等に生じた破損・汚損などの損害を補償するオプションで、事務用機器や厨房機器などの電気的・機械的事故の補償まで含めるかどうかも選択できます。自己負担額(免責金額)の設定もできます。
商品・製品等総合補償特約
商品・製品等に生じた盗難・破損・汚損などによる被害を、保管中・輸送中を問わず補償するオプションで、在庫を多く抱える業種の場合は加入することをおすすめします。被害額から自己負担額を差し引いた残額が保険金として支払われる仕組みです。
特定地震危険補償利益保険とは
地震については、日本は地震が多いという特殊事情を抱えていることから「特定地震危険補償利益保険」というオプションが用意されているケースもあります。これは、大地震が発生した時に会社の経営を守る損害保険で、建物など不動産に関する損害だけでなく、地震によるさまざまなリスクを補償するオプションです。ここでいう「特定地震」とは、特定の地区でマグニチュードが一定規模以上かつ震源の深さが60km以内で起こった地震のことです。この対象地区内において大地震が発生した時は、休業損失を補償し、損失が確定する前に保険金の仮払いができます。つまり、事業を継続させるためには心強いオプションといえます。自社の施設に損傷がなくても地震による休業が発生する場合があるので、その際の補償としても活用できます。ちなみに、建物の築年数や構造級別に関係なく加入できるのも大きなポイントです。
店舗総合保険にクーリングオフはあるのか
通販ではよく聞く「クーリングオフ」ですが、実は店舗総合保険でもクーリングオフ制度があります。最近は損害保険全体でクーリングオフを設定している場合も多く、保険期間が1年を超える契約の場合(大抵は1年もしくは2年で契約します)、申込みの撤回・解除が可能となっています。
クーリングオフが可能な期間は「契約を申し込んだ日」または「クーリングオフ説明書(重要事項説明書)を受領した日」の、いずれか遅い日から数えて8日以内と若干短いものですが、その期間に考えが変わった時は利用しても良いでしょう。クーリングオフを行う場合は、郵便にて通知することが多く、代理人による申し出は認められないことがあるので注意が必要です。クーリングオフが認められた場合は、保険料はすぐに返還されます。また、クーリングオフを申請したからといって、保険会社や代理店が損害賠償や違約金を請求してくることはないので安心してください。
店舗総合保険を活用して安心の経済活動を
このように、住宅の火災保険と店舗総合保険の補償内容はとても似ていますので、現在経済活動が縮小しているタイミングで、今一度店舗の保険について検討する時間を設けるというのはいかがでしょうか。
現在監修している保険についても、現状とかみ合っているかどうかを考慮し、契約内容を見直してみるというのもひとつの方法です。特に、店舗と住宅を併設している場合、住宅用の火災保険にしか加入していない場合は店舗部分の補償を受けられないこともあります。契約書を見直し、適切な保険に加入しているかどうかをチェックしてみましょう。
記事監修
【一級建築士】登立 健一 一級建築士。全国建物診断サービスのwebサイト監修の他、グループ会社の株式会社ゼンシンダンの記事も監修。 |