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最大震度6弱…大阪北部地震の概要を細かく書いてみる

2018年6月18日午前7時58分頃、大阪北部地震は発生しました。地震の規模を示すマグニチュードは6.1、震源の深さは13kmで、大阪市北区・高槻市・枚方市・茨木市・箕面市の5市区で最大震度6弱を記録しました。
2011年3月に東日本大震災が、2016年4月に熊本地震が発生し、日本では震度6弱を超える地震の回数が増えており、今後の大地震への不安が増大しています。

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地震 被害 写真

今回の地震の概要

防災科学技術研究所によると、大阪北部地震の本震は、西北西・東南東を圧縮面とする逆断層型(※1)とされています。
気象庁が発表したマグニチュードは 6.1で、その後の余震活動も確認されました。余震は、地震活動域の北側で逆断層型、南側で横ずれ断層型というような混在した型の地震が発生していることから、今後も注意が必要だと考えられています。
気象庁は、地震検知から3.2秒後となる7時58分41.9秒に

緊急地震速報を大阪府・京都府・兵庫県南部及び淡路島・滋賀県・奈良県・三重県中部と北部・福井県嶺南・和歌山県北部・香川県東部に発表、大きな揺れに備えるよう警告しました。

※1逆断層型・・・地殻を水平方向に圧縮する力が働き、断層がずれることによって起こる。乗り上げている側の岩盤(上盤)が上昇する

地震当日に気象庁は記者会見を行い、今回の地震の概要を発表しました。

気象庁が1923年に観測を開始して以来大阪府で震度6弱以上の揺れを観測したのは観測史上初めてという報道もありましたが、実はこの100年近い間に震度の観測法・観測点の密度が大きく変化しており、過去の地震の震度や規模と今回の地震を単純比較することはあまり意味のないことです。
また、気象庁震度階級が大きく変わる契機となった1995年の阪神淡路大震災では、大阪市西淀川区・豊中市・池田市など大阪の一部地域で震度6の揺れがあっただろうと判定されていることから、観測史上初というのは言い過ぎかもしれません。
とはいえ、関西でここまで大きな地震が起きるのは20数年ぶりでしたので、先だっての熊本地震も含め、日本のどこであっても大きな地震が起きる可能性があることが証明された形となりました。
ちなみに、大阪府付近の巨大地震としては、1995年の阪神淡路大震災でマグニチュード 7.3を記録、それ以前では1936年の河内大和地震のマグニチュード6.4にまでさかのぼります。

また、地震当日の地震調査委員会の発表によれば、周辺の断層帯が今回の地震活動に関連している可能性はあるものの、今後の調査・観測結果などを慎重に検討する必要があると結論づけています。

被害と問題点について


大阪 ブロック塀

総務省消防庁が7月5日午後6時までに集計した数字に拠れば、大阪府内で死者4名、2府5県で負傷者434名、住宅の全壊9棟・半壊87棟・一部破損2万7096棟となっています。地震が原因となった火災は大阪府と兵庫県で計7件が発生しています。
また、大阪市東淀川区、高槻市、茨木市で死亡事故に至る人的被害が発生し、うち2名はブロック塀の崩落、1名は本棚の下敷きとなるといった痛ましい結果となってしまいました。


そのほか、大阪・京都・兵庫・滋賀奈良の5府県ではエレベーターの閉じ込め事故が214件発生しましたが、当日中にすべての方が救助されています。
しかし、エレベーターの故障による停止が長期化しているビルやマンションも多くあり、生活への影響が深刻になったという問題点も発生しました。
ビル設備管理大手2社が確認しているだけでも、約3万4千基が停止し、復旧に時間を要しました。

というのも日本エレベーター協会の説明によると、エレベーターの事故が起きた場合、最優先するのはもちろんエレベーター内に閉じ込められた人の救出です。

その次に病院・行政機関などの公共施設、そして高さ60m以上の高層住宅の順で復旧を進めることから、一般のマンションやビルの対応はどうしても最後になってしまうのです。

死亡事故については、ブロック塀の崩壊が大々的に報道されました。特に高槻市の事例は、小学校のプール沿いのブロック塀が倒れ登校途中の小学生が下敷きになるというものだったこともあり、その杜撰な管理に非難が集中しました。

実は、倒壊した壁は元々の高さ1.9mの壁の上に目隠し目的で増設されたブロック8段分・1.6mが積み上げられた、建築基準法違反によるものだったのです。

しかも、高さ1.2m以上のブロック塀に設置が必要な控壁もなく、2015年11月には防災アドバイザーが壁の危険性を指摘していたものでした。高槻市は職員の判断ミスを認め、6月18日の記者会見で高槻市長は謝罪しました。

この高槻市の事故を受けて、文部科学省は事故が発生した小学校に職員と専門家を派遣するだけでなく、全国の小学校・中学校設置者に対して敷地内のブロック塀の緊急点検を実施するよう要請しました。
また、大阪府箕面市では市内の公立の全小・中学校に設置されているブロック塀をすべて撤去することを決定し、国土交通省住宅局建築指導課も一般建築物におけるブロック塀のチェックポイントを作成して、特定行政庁などに安全点検を行うように通知しました。

建築基準法違反にどう対応するか

このように、人的被害が出た後に建築基準法違反が発覚した場合は、実際にはどのように対応すれば良いのでしょうか。
今回の地震だけでなく、過去の地震においても建築基準法違反の建物における人的被害は報告されていて、2016年の熊本地震でも塀の下敷きで1人が死亡し訴訟となりました。
1995年の阪神淡路大震災においても、ブロック塀等による人的被害は2468件にまで上りました。阪神淡路大震災後にさまざまな法令改定やノウハウの吸収などがあったはずなのですが、残念ながら悲劇は繰り返されてしまいました。
今後、このような事故が起こらないようにするためには、国や自治体による点検・改善命令はもちろん、法改正以前のものであっても建築基準法に則った整備の義務化など厳しい条項が必要でしょう。
地震

では、このような建築基準法違反による事故で訴訟になった場合、建築施工者はどのような罪に問われるのでしょうか。私たちがこのような罪に問われる可能性があるとすれば、賃貸物件のオーナーになった場合です。この場合でも、修繕義務を怠ったことが住人や通りがかりの人の被害につながったと判断された場合、罪に問われてしまいます。
建築基準法違反があった場合は、懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金が科せられます。

これが法人として運営している物件であれば、そのハードルはさらに高くなり1億円以下の罰金が科せられることもあります。また、その違反建築物で死者が出てしまうと、「業務上過失致死罪」という刑事罰も加わることから、懲役5年以下もしくは禁錮又は100万円以下の罰金を科せられてしまうのです。

過去の事例でいえば、2001年に発生した新宿歌舞伎町ビル火災では多くの犠牲者が出てしまいました。この事件では、ビルのオーナーは被害者に対して10億円の和解金を支払うだけでなく、業務上過失致死罪で禁固2~3年、執行猶予4~5年という有罪判決も受けています。

もしあなたが賃貸物件のオーナーで、地震が発生した時に所有する物件に問題がでる可能性があるとすれば、今すぐにでも対策をスタートすることをおすすめします。
もちろん日頃の管理は重要ですが、巨大地震の可能性は年々高まっていることを考慮すると、地震対策も行っておかなければなりません。

耐震化が進まない理由

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れではなぜ、地震対策はなかなか行われないのでしょうか。国土交通省は2003年に発表した資料では、住宅4700万戸のうち耐震性があると認められたのは約3550万戸(約75%)でした。つまり、残りの1150万戸は耐震性がないと判断されました。
そしてその5年後、2008年の調査では耐震性がないとされる住宅は1050万戸まで減ったものの、旧耐震基準(震度5の地震への耐震性が認められる)として耐震性が認められたものが3250万戸だったということで、新耐震基準(震度6の地震への耐震性が認められる)に合致しているかははっきりしていません。この事実は、日本の耐震化はほとんど進んでいないことを意味しています。

では、耐震化が進まないのはなぜなのでしょうか。
東京都が耐震化を進めていないオーナーや住宅所有者にアンケート調査(複数回答可)をしたところ「工事費用が高い」が66.1%、「建物に合った改修工法の選定ができない」が22.0%、そして「区分所有者の合意形成が難しい」が21.2%という結果が出ました。つまり、国や自治体が政策のひとつとして耐震化に取り組む必要があるということです。

今後の余震の可能性は?

今回の大阪北部地震に関しては、今後の余震の可能性が指摘されています。
気象庁によれば、地震発生から約29時間が経過した19日午後1時までに発生した有感地震は29回で、最大震度7を観測した熊本地震や2004年の新潟県中越地震などと比較すると余震は少ないのですが、地震発生前よりも活動が活発化していることは間違いないことからいつ大きな余震が発生してもおかしくないと発表しています。

では、なぜ巨大地震のあとには余震が発生するのでしょうか。
そもそも地震とは、地下の岩盤が周囲からの圧力や引力により急激にずれることで発生します。そのため、巨大地震が起こるとその影響で周辺の地下の岩盤が不安定な状態になり、その安定化を図るために余震が起こるというわけです。
確度の高い巨大地震の予知は不可能というのは地震学における定説といわれていますが、一度巨大地震が起こった際の余震についてはある程度の規則性が発見されています。余震は、時間の経過とともに減少し、規模が大きい余震は少なく、規模の小さな余震は多いこと。そして、本震の規模(マグニチュード)が大きい時は余震が収まるまでの時間は長くなるなどです。

しかし、注意が必要なのは、余震は減少していく傾向にありますが、その過程で大きな被害が出る余震が発生することがあることです。
巨大地震の後にその近くですぐに余震が起きる「本震→余震型」という地震は多いのですが、熊本地震のように先行して本震より小さな規模の地震活動が活発化する「前震→本震→余震型」というパターンもあるので油断はできません。
そのため、どの地震が最も規模の大きい本震なのか地震活動がある程度収まらないと判断できないのです。今回の大阪北部地震においても「本震→余震型」なのか、「前震→本震→余震型」なのかはもう少し時間が経過しなければ判断できません。

ちなみに、気象庁は熊本地震が起こるまでは「本震→余震型」を基準に余震予測を発表してきました。しかし、熊本地震という前例ができてしまったために、「前震→本震→余震型」の可能性も視野に入れて巨大地震に対する注意を呼び掛けています。
巨大地震が起きたことで、建物や地盤の強度が弱くなり余震と思われていた地震が思わぬ大きな被害につながることもあります。
とにかく、巨大地震が起きた時には、余震だけではなくさらに大きな揺れのある“本当の”本震が来る可能性についても頭の中に入れておく必要があります。

地震保険を活用するには片付ける前に被害写真を撮影しておくこと

地震 被害 写真

このような被害の補償をしてくれるのは、火災保険ではなく地震保険です。
地震保険は、火災保険とセットで加入する保険で、地震・噴火・津波による被害を補償してくれるものです。
その判断基準は、全損(保険金額の100%)・大半損(保険金額の60%)・小半損(保険金額の30%)・一部損(保険金額の5%)の4段階に分かれていて、保険会社の判断により決められます。
地震保険は、日常生活を取り戻すためのお手伝いをする保険と位置付けられていることから、火災保険のように復旧のための全額が保証されているわけではありません。しかし、家財においては実際の被害額よりも多くの保険金がおりることもないわけではありません。

しかし、保険会社はどれくらいの被害が出たのかを判断するために証拠を求めます。
そのため、地震保険に加入した時点で家財の写真を撮影して起き、被害が出た後も片づける前に証拠写真を撮影しておくことをおすすめします。
現場の状況を確認する鑑定士がやって来た時に、被災直後の家の中の状況をうまく説明することが難しいことが考えられます。そのため、写真を撮影しておくことでどれくらいの被害が出たのかが証明できるというわけです。
建物と違い、家財は片づけてしまうと被害の証明のしようがありません。そのため、大変な状況の中でも写真撮影だけは忘れずにしておきましょう。



記事監修


kansyuu
【一級建築士】登立 健一
一級建築士。全国建物診断サービスのwebサイト監修の他、グループ会社の株式会社ゼンシンダンの記事も監修。