2018年1月22日、東京都心に積雪20cmという大雪が降りました。
電車・飛行機など公共交通機関に乱れが出て、首都高も数日間の通行止めという大きな影響がでました。慣れない雪道で転倒し救急車で運ばれる方も続出し、関東全域がパニックに近い常態となりました。
この雪は空から降ってくる氷の結晶で、実は東京・神奈川など「太平洋側で降る雪」と、新潟・石川など「日本海側で降る雪」ではそのメカニズムは大きく違います。
一般的には、雪が降る条件としていわゆる「西高東低」の「冬型の気圧配置」が有名です。西に高気圧、東に低気圧がある気圧配置により、日本列島に強力な寒気が流れ込むことで一気に気温が下がる仕組みです。
この冬型の気圧配置では、日本海側の地域で大雪となり、その大雪を降らせた雪雲は水分を失いながら山脈を越えて太平洋側に流れ込んできます。東京に流れ込んできた雲はすでに乾燥しているので、太平洋側で雪を降らせることはありません。つまり、冬型の気圧配置によって関東で雪が降ることはほとんどないのです。(名古屋や大阪の雪は冬型の気圧地によることが多々あります)
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東京で雪が降った原因「南岸低気圧」
では、東京で雪が降るのはどのような時なのでしょうか?それは「南岸低気圧」が日本列島にやってきた時です。
南岸低気圧とは、その名の通り東京の南岸地域を通る低気圧のことで、4年前の関東の大雪の原因にもなりました。
4年前の雪害での火災保険記事:山梨県笛吹市 築4年でも雨樋被害は有る 火災保険で106万の認定
2014年2月には東京で二度大雪が降りましたが、その時も四国の南の太平洋側から前線を伴った低気圧が、東京の南岸に移動してきました。この南岸低気圧が太平洋側を縦断することで、東京に大雪をもたらしました。
とはいえ、南岸低気圧が東京の近くにやってくると絶対に大雪が降るのかというと、そうでもありません。
この南岸低気圧は、通過場所などの条件により雨か雪か変化してしまうのです。そのため、この南岸低気圧は天気予報の中でも予報が難しい現象のひとつとして数えられています。
また、南岸低気圧の予報が難しいのはその“位置”にも原因があります。
南岸低気圧は、日本の南側で発生したものなので、その性質上暖気を伴っています。ということは、暖かい空気を持っているので、東京に近いところを通る時に東京周辺の気温が高くなるので雪ではなく雨が降ることになります。
また、東京から遠いところを通ると、水分をあまり含まないまま通り過ぎるので、雨すら降ることなく終わってしまうこともあります。
こういったいろいろな要素が組み合って初めて都心部の積雪になるのです。
そのため、東京で大雪をもたらす南岸低気圧は、東京からある一定の距離を通ることがポイントになります。
その一定の距離というのが伊豆諸島の八丈島付近で、この付近を南岸低気圧が通過する時は東京で雪が降る確率が高くなります。
しかし、八丈島より東京寄りを通過すると雨になる確率が高くなり、八丈島より南側を通過すると何も降らない確率が高くなるというわけです。
東北沖からくる寒気が雪になる
南岸低気圧が関東地方に近づくと、水分だけでなく東北沖から寒気をも引き寄せてくることになります。
この寒気と低気圧の水分が結びついて、関東地方に大雪が降るという仕組みです。
しかし、天気予報が難しい南岸低気圧なので、この結びつく条件もいろいろあります。
では、どのような条件が満たされれば、東京に雪が降るのでしょうか。
① 地上の気温が2℃未満になること
これまでに東京に大雪が降った時のデータを調査してみると、気温が2.0℃以上の時は雨になる確率が高く、逆に2.0度未満の時は雪が降る可能性が高くなっていることがわかりました。
そのため、東京で雪が降るかどうかは気温が2℃未満になっていることが条件として考えられます。
② 上空1500mの気温が-3℃以下
雪が降るかどうかを判断する時に重要になるのが、上空の寒気の強さ要です。
日本海側の降雪予想では「上空1500mの気温が-6℃以下」という大原則があるのですが、関東地方の降雪予想の場合はちょっと違います。
というのも、東北沖から引き寄せられた寒気が関東地方に流れ込んでくることで地表付近の気温が低くなることから、上空の寒気が弱い状態でも降雪の可能性が高くなるからです。
そのため「上空1500mの気温が-3℃以下」というのが、東京で降雪する条件として挙げられます。
まとめると、東京で雪が降る大きな原因は「南岸低気圧が八丈島周辺を通ること」です。そして、上空の気温・地表面の気温など様々な要素があります。東京で降雪があった場合は、ほぼ確実に電車が遅れます。
今回も品川駅・渋谷駅に入場制限がかかるなど大混乱が起こりました。
そのため、早めに家を出るなどの対策が重要になります。
火災保険でカバーできる「雪災」とは
関東地方の大雪は、公共交通機関以外にも大きな被害をもたらすことがあります。
それが「家」。
というのも、関東地方の家は大雪を想定して作られていないので、思いもよらない自然災害で被害が出てしまうことがあります。
このような雪による災害を雪災と呼びます。
雪災とは、主に屋根からの落雪による損害が多いのですが、豪雪地方では雪の重みで建物が潰れてしまう事もあるほど、大きな被害が出ることがあります。
雪があまり降らない地域では雪災補償は不要かも知れません…ということがインターネットの情報ではよく記載されているかもしれませんが、いつ大雪が降るかわからない現在の状況では、雪が降らない地域でも雪災補償をつけておいた方が安心かもしれません。
この雪災補償、どの保険でカバーされているのかというと火災保険です。
火災保険は、その名の通り火災による被害のほかに、風や雪・ひょうなどの自然災害による被害も補償してくれる保険です。住宅を購入する際に住宅ローンを組んだ方は基本的に加入する保険ではあるのですが、この時にどのような条件で保険に加入しているかがポイントになります。
雪災補償はオプションのひとつなので、このオプションを外していれば雪による被害は補償されないことになってしまいます。
そこで、この大雪のタイミングで一度加入している火災保険の保険証券を見直してみてはいかがでしょうか。
雪災補償が付いていれば、火災保険を使って雪による損害部分の修理を無料でできるかもしれません。
※通常の商品ではほとんどがついています。
雪の災害で壊れやすい箇所
このように、大雪で家に被害が出た時には火災保険で修理費用を補償できます。
では、どのような被害の修理を補償してもらえるのでしょうか。
以下、雪によって被害が出やすい箇所をまとめてみました。
① 雨樋
雪災で最も多いといわれているのが、雨樋が歪んでしまうという損害です。
雨樋の歪みは保険会社に一番証明しやすい損害箇所といわれていることから、ほとんどのケースで火災保険による補償が可能です。
また、雨樋の交換を行う際には足場工事が必要になることがほとんどです、保険会社に修理費用の申請をする時に足場工事代金(数十万円かかることもあります)を含めることを忘れないようにしましょう。
雨樋をとめる金具や軒樋と竪樋を分けたり集水器なども細かく項目を分けたほうが降りやすいです。
② 屋根
大雪が降って屋根の上に積もってしまうと、雪の重みにより軒先が歪んでしまうことがあります。
そして2階から落雪し1階の屋根瓦が壊れてしまうということもあります。
この場合は、屋根瓦の葺き替え工事費用を請求できる場合が御座います。
火災保険では実損払いとなるので申請見積もりの出し方が重要になります。
③ カーポート・テラス
雪の重みでカーポートが倒壊したり、テラスに穴が開いたりした時も、火災保険の対象になります。
4年前の2014年の雪害で保険会社は4000億円以上火災保険金を支払ってます。
その金額を占めているのがカーポート。 本体ごと交換がほぼ認められ雨樋や足場を含めると戸建てでも300万や400万の認定も珍しくありませんでした。
④ 雨漏り
雪によって屋根に被害が出て、排水性が悪い雪解け水が雨漏りをもたらすことがあります。
この場合は、「突発的な積雪の場合」という条件付ですが火災保険で修理ができます。
慢性的な雨漏りはもちろん、長期的な雪解けによる雨漏りも認めていない場合もあるので注意が必要です。
⑤ アンテナ
屋根や外壁についているアンテナの修理・交換も可能です。この場合も、足場工事費用を含めた修理費用を請求することを忘れないようにしましょう。
関東圏と雪害地域の家の違い
では、北海道・東北・北越地方のような豪雪地帯の家は、関東圏の家とどのような違いがあるのでしょうか?
一番の違いは、「雪に強い屋根」を持っていることです。
雪に強い屋根とは、吸水率が低く雨漏りが起こりづらい構造をしているという事です。
吸水性が高い屋根や雨水が染み込みやすい構造の屋根は、内側に入り込んだ雨水が凍結することで屋根材を痛めてしまうことがあります。
その点、金属屋根(特にガルバリウム鋼板)を使用すると、密閉性が高く水が染み込みにくくなるので、豪雪地帯ではよく使用されています。
実に、豪雪地帯における金属屋根の家の割合は70%近いといわれています。
瓦屋根が少ない理由は、豪雪で瓦自体がずれる恐れがあること、そのずれにより雨漏りが発生するリスクが高いこと、瓦内部に染み込んだ水が凍結することで瓦が割れるリスクが高くなることなどが挙げられます。
また、豪雪地域では落雪による事故を防止するために雪下ろしの必要がない無落雪屋根も多く採用されています。
関連記事:北海道石狩市 無落雪建築の建物での雪害申請可能です
金属屋根の特長
では、改めて金属屋根のメリットをまとめてみましょう。
① 雪に強い
屋根に積もった雪は、居住人が家の中で生活することで解けることがほとんどです。
しかし、建物から出っ張っている庇部分には、雪が残ってしまい段差ができます。
そこに水がたまり、瓦葺きの屋根の場合は水がどんどん染み込んでしまい、雨漏りを引き起こします。
しかし、金属屋根の場合は金属を組み合わせていくことでほぼ密閉されることから、水が染み込みにくい構造となっています。そのため、豪雪地帯では金属屋根が多くなり、瓦屋根があまり採用されません。
② 地震に強い
水だけでなく地震にも強いのが金属屋根の特徴です。
瓦屋根のように屋根が重くなってしまうと建物の重心が高くなることから、地震で揺れた時に降り幅が大きくなるので、建物の倒壊を引き起こすリスクが高くなってしまいます。
重量的には、瓦屋根の家は自動車約7台分の重さがあることから、地震による倒壊のリスクが高まります。
一方、金属屋根の場合は自動車1台分の重量しかありません。
このため、建物の重心が低くなり、揺れにも強い構造となります。
瓦屋根から金属屋根に変えるとすると、柱を2割ほど太くするくらいの強度のアップになると考えられています。
地震保険の申請方法はこちら:地震保険申請で保険金が受給できるまでの流れ
③ 環境にも優しい
数十年前によく使用されていた石綿板製の屋根材は、その大部分にアスベストが含まれていたことから、屋根のリフォームの際に有害物質を撒き散らす可能性が高くなります。
古い屋根の上に金属を被せる「カバー工法」という方法もあるのですが、屋根を剥がす場合には有害物質が飛び散らないように防塵対策や既存屋根の処分をしなければならないので、莫大な費用になってしまいます。
しかし、金属屋根は溶かして再利用することができるので、リサイクルという観点からも優秀な素材といえますし、環境汚染物も一切含まれていません。
日本海沿岸で使用される「石州瓦」
豪雪地域の中でも、金属屋根ではなく瓦屋根を多く採用している地域があります。
それが、北陸地方で、「石州瓦」という種類の瓦屋根が多く見られることで知られています。
この石州瓦の特徴は、鉄分が少ない良質な白陶土と出雲の来待石から取れる釉薬を使用していることです。
また、柿色をしていることから「赤瓦」とも呼ばれています。
なぜ北陸地方ではこの石州瓦がよく使われているのか…それは、産地である島根県が近いという地理的な要素のほかに、塩害・凍害に強い瓦であるからと考えられています。
地域にあった屋根材が多く使われている
北海道では「瓦は積雪に弱い」というイメージが定着しているためほとんど瓦屋根は採用されませんが、瓦の中でも釉薬瓦は釉薬でコーティングされていることから、吸水性が低く凍害に強いため金属屋根と同じような効果があるとされています。その中でも、石州瓦は高温で焼き上げるので、瓦の水分が少なくなり寒さに強いといわれています。
また、塩害に強いこともポイントです。
特に、日本海沿岸は冬の季節風が強いことから、海水が霧のように家に吹き付けます。
錆ができやすい環境下においては、石州瓦は重宝されます。
逆に、金属屋根はこの錆を弱点としています。金属屋根の中でガルバリウム鋼板は防錆性が高いといわれているものの、瓦よりは錆びやすいことから、日本海からの吹きつけが強い北陸地方では石州瓦が普及したと考えられます。
ちなみに、JR北海道は年間50億円ほどを雪対策のために予算計上しているとのこと。
たかが雪、されど雪。大切なマイホームに被害が出ないように、対策をしっかりしておきたいものです。
いま現在被害がなくても全国でホームドッグを展開しておりますのでご相談だけでもお気軽にどうぞ。
記事監修
【一級建築士】登立 健一 一級建築士。全国建物診断サービスのwebサイト監修の他、グループ会社の株式会社ゼンシンダンの記事も監修。 |