屋根の修繕は、自分ではなかなか登れないことから専門業者に任せることが多くなります。そのため、自分の目で状況が確認できないことから不安なことばかりでしょう。実は、そこに目をつけた悪徳業者が存在することも事実です。
しかし、屋根の修繕について知識を持っていれば、悪徳業者にだまされることはなくなります。
そこで今回は、悪徳業者がよく使う手口を紹介し、トラブルに巻き込まれないように紹介していきます。
屋根修繕で火災保険を考えている方はこちらの記事をご覧ください:屋根修理で費用を抑えるには?
飛び込み業者の手口
住宅の修理業者の中でも、屋根の修繕を狙った悪徳業者は少なくありません。
というのも、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターによると、戸建住宅に起こる不具合の2割は雨漏りや屋根材の損傷など屋根の不具合に関するとのことです。
雨漏りが起こると、屋根以外にも内壁や床にも被害が及ぶので、早急に対応したいもの。
そこにつけ込んでくるのが、悪徳業者なのです。無料点検とだまして屋根に登って自ら損傷を壊したり、ブルーシートをかぶせるだけで高額な修理代を請求したりされたという例も報告されています。
また、飛び込み業者がよく使う手口に「今日契約すればいつもより安く工事ができます」「近くで工事をしているのですぐに修理ができます」というような特別感を打ち出してくることがありますが、これはどこでも言っていることなので注意が必要です。
また、屋根材に瓦を使用している戸建住宅で20年が経過している場合は飛び込み業者に狙われる可能性が高くなります。
古い瓦については、住人が不安になるような(実際は違うのですが)謳い文句が使われるので、不安に感じてしまうかもしれません。例えば「瓦屋根は一部の工事ができないので全部取り替える必要がある」「瓦は重いので危ないから、軽量の屋根材に変えないと家がつぶれる」など…屋根の専門業者にいわせると、まだ使用できる瓦を再利用する方法である「葺き直し」をすれば問題ないのですが、悪徳業者は少しでも高額にしようという提案をしてきます。
ちなみに葺き直しでは、廃棄物を処理する費用と新しく使う屋根材が少量になることからコストが抑えられる方法です。
廃棄物が少なくなることから、地球環境にも優しいエコな方法として、優良な屋根業者が薦める方法です。
実はこの方法は、悪徳業者であればできない場合があります。というのも、瓦を葺き直すことは技術的に難度が高いことから職人を手配できなかったり、新しい材料を使用しないので売り上げが少なかったりと、悪徳業者にとってはデメリット(施主にはメリット)しかないからです。
また、悪徳業者でなくとも、純粋に屋根に関する知識に乏しい建築関係者は意外に多いというのも事実です。
そのため、不要な大規模な工事になってしまいコストがかかるというケースも見受けられます。そのため、屋根の修繕工事に関しては、屋根の工事を専門にやっている業者か、総合住宅工事業者でも施工例がたくさんある業者に依頼することをおすすめします。
悪徳業者の判別方法とは
ではどのような業者が悪徳業者なのか、その判別方法を解説していきましょう。
屋根や塗装の知識がない
悪徳業者は、技術的なことよりも営業面を優先させるため、自社施工を行っていないことが多いです。
そのため、屋根や塗装に関する知識が乏しいので、少し専門的なことを質問すると答えられないことがあります。
逆に、社長や職人が自ら現場で施工を行っている会社は、営業担当者も工事に同行することが多く自然に知識がついていくものです。
実際に施工する職人(もしくは業者)とのコミュニケーションが取れていなかったり、クレームに対する対応が遅かったりする業者は悪徳業者かもしれません。
工事の完工写真以外にも、下地や中塗りをしっかりとして
いるかどうかの【工事中】の写真も判断材料になります。
住んでいる近くの工事事例で、2-3の工事中の写真を見してもらえればひとまず安心できる業者といえるでしょう。
無料の点検・無料の火災保険勧誘
悪徳業者の飛び込みに多いパターンが、とにかく「無料」を強調してくることです。
かつて、屋根の修繕に関する悪徳な訪問販売が増加したことから、そもそも訪問販売や訪問営業を断る人も多いとは思いますが、屋根という素人ではなかなかチェックが難しい場所だからこそ、悪徳業者が付け入るスキがあるのです。
「専門業者でなければ、不具合の原因を突き止められない」という先入観から、無料の屋根点検をOKしてしまい、虚偽の点検作業や写真をもとに高額な修理費を請求されてしまうことがあります。
無料という意味では、火災保険を悪用したケースも多く見受けられます。
火災保険は非常に便利な保険で、火事はもちろん、自然災害で被害を受けた住宅・家財の補償をしてくれるものです。
場合によっては、無料ですべての工事を賄うことができます。
この部分を強調して、「火災保険を使えば無料で屋根の工事ができる」と提案してくる悪徳業者は少なくありません。
しかし、火災保険を利用した屋根工事は正当な理由がなければ保険はおりませんし、悪徳業者に任せると虚偽の申請をされたり、申請もせず保険金がおりなかったので修理費は自己負担で支払う必要が出てきたりしてしまいます。
このように、無料を強調してくる業者は注意が必要です。
修理がなかなか終わらない
優良な屋根の修繕業者であれば、雨漏りや屋根のトラブルの原因をすぐに特定し、施主の負担が少ない最善な提案をしてくれるものです。
そのため、修理の工期もできる限り短くしてくれますし、工事の後のトラブルも少なくなります。
しかし、悪徳業者の場合は何度も屋根の修繕工事を行なおうとします。
これは、工事をするたびに費用が発生するので請求額を高くできるからです。
また、修理が杜撰なため仕方なく修理が終わらないというケースもあります。
断っても何度でもやってくる営業担当者
一度断ったとしても、工事を受注したい(ノルマがある)営業担当者は何度でもやってきます。
特に、悪徳な営業専門会社の場合は完全成果報酬の契約になっていることが多く、契約を取れなければ収入がなくなってしまいます。
そのため、断っても断っても何度も訪問してくる営業担当者がいたら、マークされていると考えた方が良いでしょう。あまりにもしつこい場合は、消費者センターに相談してみましょう。
営業には飛び込み以外にも、効率的に施主様が求めているものを提供し、長い目で見てpull営業になるように変えていきましょう。
時間がかかるのを拒否する
以前は最初に依頼した業者にまかせるというパターンが多かったようですが、今は相見積もりが当然のように行われています。
一般的には3社以上の相見積もりを取ることが推奨されていますし、優良な業者は相見積もりになることを前提に見積書を提出してきます。
しかし、悪徳業者は他社の方がよい条件で修繕をさせることがわかっているので、相見積もりを拒否します。
優良な業者は、相見積もりになっても自分たちに仕事を任せてもらえるという自信があるので、相見積もりに二つ返事でOKをしてくれるはずです。
安心できる業者とは?
では、逆にどのような業者であれば安心して屋根の修繕工事を任せられるのでしょうか。
それはまず、近隣で長く営業していてリアルの店舗が存在することです。
そして、大手の新築住宅工事の実績があり、屋根材の仕入先をたくさん持っていることも大切です。
【事例】1030万円の見積もりで630万円の火災保険がおりた小学校の修繕
これらの情報はホームページや口コミから知ることができますので、工事を依頼する前にしっかり調べておきましょう。
なぜ、このような業者をおすすめするのかというと、まず近隣の業者の方が対応が早く、リーズナブルな価格設定をしていることが多いからです。
そして、長く営業をしているということは地元で信頼されていて、資金回収のためだけに存在する会社ではないということがはっきりしているからです。また、大手の指定工事店になるための安定した会社経営基盤があり、簡単に倒産する可能性が低いことからトラブルが発生するリスクは少なくなります。
最新の工法や屋根材の情報も集めている業者は、施主のために何ができるかをしっかり考えている業者ですので、安心感は高くなります。
怪しいと感じたら消費者センターへ
屋根の修繕工事についてはトラブルになる可能性が高いことから、少しでも「おかしいな」と感じた時は、消費者センターに相談することをおすすめします。
これまでにも、飛び込み営業により契約や工事を急かされたケースや、高齢の親が言われるがまま悪徳業者と契約してしまったケースなどが報告されています。
実際にPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に寄せられた相談件数を見てみますと、
2015年度の相談件数は6767件でそのうち判断不十分者契約(何かしらの原因によって正しい判断ができないまま契約されたと思われる事例)は317件、2016年度の相談件数は6593件でそのうち判断不十分者契約は281件と、およそ5%が十分に検討期間がないまま契約されてしまった事例となっています。
また、最近報告されている事例を挙げていきましょう。
事例
●近隣で工事をしているという業者が飛び込みでやってきて、屋根や外壁の無料点検をしてもらったところ、高額な契約を強引に結ばれたのでクーリング・オフできないか
●飛び込み業者と屋根・外壁の塗装を契約したものの、塗装面積の水増しをされていることがわかったのでクーリング・オフできないか
●飛び込み業者と屋根・床下改修工事の契約をし、高額だったため床下工事はクーリング・オフできたものの、屋根は改修済みなので原価だけでも払えと迫られているが払う必要はあるのか
●認知症で一人暮らしの母親が飛び込み業者にだまされて高額な屋根の塗装工事契約をしてしまったのだが、クーリング・オフできないか
●実家の両親が飛び込み業者に「火災保険を使えば無料で工事できる」と提案されて屋根修理を行ったが、実際は火災保険の対象外で多額の自己負担が発生してしまったがどうにかできないか
●飛び込み業者から屋根瓦が落ちていたと指摘され、屋根工事契約を交わしたが、その瓦はほかの家のものだったのでクーリング・オフできないか
このように、屋根の修繕に関しては様々なトラブルが発生しているので、悪徳業者の口車に乗らないように注意しましょう。
屋根の修理における火災保険の活用方法
火災保険は、その名の通り火事による被害があった時はもちろん、自然災害による被害も対象になる保険です。
特に、日本は台風が多いことから屋根は風による被害を多く被りがちです。
関連記事:台風21号での家屋被害申請は早めに行うと保険金が出やすい
この風災被害は火災保険の対象となりますので、保険金を活用して屋根の修理を行うことが合法です。
せっかく保険料を払っているのですから、火災保険は積極的に活用するべきなのですが、正当な理由がある場合に限ります。虚偽の申請をしてしまうと、それ以後正当な申請をしても審査に時間がかかったり、最悪の場合は保険金がおりなかったりすることがあるからです。
また、火災保険の申請代行会社(この場合は施工を行わないで代行のみを行っている会社という意味です)は、自分や工事業者が火災保険を申請することは難しいと提案してきますが、この火災保険申請代行ビジネスは消費者センターも問題視しているので、依頼するのは避けた方が賢明です。
実は、火災保険の申請自体はとても簡単です。正しい方法で申請すれば、希望額に近い保険金がスムーズに支払われるので、自分で申請するか、火災保険を活用した修理に慣れている工事業者に依頼するかのいずれかの方法で申請するのが良いでしょう。
火災保険は住宅購入時(賃貸時)に基本的に加入するもので、火事による保険金申請自体は減少傾向にあることから、「住まいの保険」と言い換える会社も増えているのが現状です。ちなみに、以下のようなケースでも火災保険の補償がおりています。
●台風により屋根がはがれたので、足場を含む工事費を補償してもらった
●屋根や外壁にスプレーで落書きされたので塗装をした(「不測かつ突発的な事故」として扱われます)
●室内で遊んでいた子どもが誤って窓ガラスを割ってしまったので新しいガラスに付け替えた(「不測かつ突発的な事故」として扱われます)
もちろん、どのような契約をしているかにもよりますが、これらの例は実際に火災保険の補償内で賄われたものです。このように、火災保険の対象は多岐に渡ることから、屋根だけでなく正しい申請を行えばしっかりとした補償をしてもらえます。
火災保険は、想像しているよりも簡単ですし速やかに保険金が支払われるものです。まずは、正しい工事をしてくれる優良な会社に見積書をお願いするところからスタートしますので、屋根工事の実績が抱負で、火災保険を活用した修理に慣れている屋根の修繕会社を見つけて依頼しましょう。
記事監修
【一級建築士】登立 健一 一級建築士。全国建物診断サービスのwebサイト監修の他、グループ会社の株式会社ゼンシンダンの記事も監修。 |