カバー工法とは屋根のリフォーム方法のひとつで、既存の屋根材の上に、金属屋根を重ね張りすることを指します。
特に工事業者さんがお話するので多いのがコロニアルの屋根です。
このコロニアルは、軽量かつ初期費用が安いことから新築の戸建て住宅での採用率が最も高いことから、1960年代以降の高度成長期の日本で急速に普及してきました。
しかし、コロニアルは色褪せによる美観の低下という特徴があり、10年に1度は塗装工事をした方がよいといわれています。また、築30年を経過すると塗膜の形成ができなくなるため、本格的な改修工事を必要とします。
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改修工事としては、もとのコロニアルを剥がして葺き替える方法があるのですが、屋根を剥がしたりアスベスト含有屋根材の処分をしたり工事費が高額になってしまいます。
そこで開発されたのが、カバー工法です。
もとのコロニアルの上に軽量屋根材を張る方法で、「重ね葺き」「重ね張り」「被せ張り」とも呼ばれます。
今や、コロニアルのリフォーム工事の中ではスタンダードな方法といわれるほど普及しています。
この上に重ねる屋根材は、屋根瓦のフォルムに加工した成型ガルバリウム鋼板屋根が最も使用されています。そのほかにも、樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦や自然石粒仕上げ軽量屋根などが使用されます。
カバー工法のメリット・デメリット
どんな商品にもサービスにも受ける側からしたらメリット・デメリットがあります。
様々な方面からカバー工法を見ていきましょう。
メリット
カバー工法のメリットとしては、まず屋根材を撤去する人件費や廃材処理費がかからないことが挙げられます。
そのため、工事費用が安くなります。
そして、金属屋根の裏面にある断熱材が防音性を高めてくれるので、断熱性も向上します。
また、屋根が二重構造になることから、断熱性・防音性だけでなく防水性の向上も期待できます。
工事の際に養生をする必要もないので、工事日数がほかの工事よりも2~4日短縮されます。
これは、葺き替え工事の約半分の日数です。
そして、公害問題の心配もなくなります。2004年以前に製造されたスレート瓦にはアスベストが含まれていることから、癌を誘発する可能性の高いアスベストを含んだ屋根材の使用・製造・販売は禁止されました。
また、アスベストの撤去には特別な資格が必要ですし、処分費用も安くありません。このカバー方法であれば、養生も不要ですしアスベストが近隣に飛散する心配もありません。
カバー工法のデメリット
カバー工法のデメリットとしては、屋根が二重構造になることで重くなることです。しかし、軽量金属屋根材を使用した場合は屋根の重さを過剰に心配する必要はありません。軽量金属屋根材の重さは1平方メートル当たり5kgほどで、一般的な戸建て住宅の場合ですと屋根の総重量は同23~26kgとなり、日本瓦の屋根は同60kgと比較するとはるかに軽くなります。
かぶせた中に水が入り込んだら・・
既存の上にかぶせて工期・工賃を安くするのがメリットではありますが、カバー工法後に万が一雨漏りをして巻き込みや、取り合い部から雨水が入ってしまったらかぶせた屋根材とその下の前の屋根材まで工事をしなくてはいけない為費用がかさみます。
メリットであるはずの防水性が行う職人やガイドラインに沿って行わない会社の場合では一気にデメリットになります。
ガルバリウム鋼板の基礎知識
では、カバー方法で使用されるガルバリウム鋼板とはどのようなものなのでしょうか。
この材料は、鉄がベースの合金板に金属メッキ加工を施したものです。
このメッキが特殊なもので、アルミニウムが55%、亜鉛が43.4%、ケイ素(シリコン)が1.6%の比率でできています。
ちなみに、亜鉛が100%のメッキをトタンと呼んでいます。
錆びにくい
この特殊な比率のメッキが、金属であるはずのガルバリウム鋼板の「錆びにくく長持ちする」という特徴のもとになっています。
しかも、軽量なので住宅の基礎に負担をかけないという大きなメリットもあります。
モルタルのようなセメント主体の建材は非常に重いことから、家自体の骨組みに負担がかかることから家が疲弊しやすいのです。
そのため、現在の家作りにおいては、外壁材は軽い方がよいというのがスタンダードになっています。
ガルバリウム鋼板は外壁材として優れているのですが、ガルバリウム鋼板を屋根材として導入するに当たってのメリットとデメリットはしっかり把握しておいた方が良いでしょう。
ガルバリウム鋼板の施工を勧める業者はメリットしかいわないのが常ですが、メンテナンスの方法が難しいというデメリットがあります。
ガルバリウムのことを「ガルバ」「ガルバニウム」「ガリバリウム」と呼ぶこともありますが、ガルバリウム鋼板の扱いは難しいことから、塗装・張り替え・補修などの施工をする際には熟練した職人が必要になります。ガルバリウム鋼板の修理は、経験豊富な専門業者にお願いしなければ後々大変なことになってしまうことがあります。
カバー工法以外にも葺き替えや補修もある
工事業者さんからカバー工法以外の話もしっかりと聞いて下さい。
耐久年数や予算により現状にあった工事にしたいものです。
屋根葺き替え工事
築年数が30年以上立っている建物や、コロニアルの劣化が激しい場合には、屋根の葺き替え工事を行うことが多くなります。葺き替え工事ではラバーロックという瓦などの屋根材同士をシリコンやコーキング剤で固定します。
しかし、このラバーロックを行うと、雨水の流れが悪くなることがありますし、屋根の雨水を乾燥させる機能が働かなくなることがあります。
そのため、雨漏りや防水シート・野地板の劣化が早まるデメリットがあります。
また、しっかり現場調査を行わずに工事を実施してしまった時に、野地板の腐食に気づかず屋根材だけを取り替えてしまうと雨漏りが起きることがあります。
このようなトラブルが起きないようにするためにも、まず葺き替え工事の工程について業者に質問してみましょう。
このときに、素人にはわからないような説明をしてくる業者であれば避けた方が良いでしょう。
専門業者と素人では知識が違うことは当たり前なので、この当たり前をしっかり説明してくれる業者であれば信頼できると考えて良いでしょう。
屋根塗装工事
屋根材の防水機能が働いていない場合や、塗料が剥がれてしまい自然環境から直接建物がダメージを受けてしまう場合は塗装工事を行います。
塗料は基本的に3回塗りをしますが、この基本を無視して1~2回塗りで終わってしまう悪徳塗装業者が存在するので注意しましょう。
また、コロニアルに塗装した場合は「縁切り」と呼ばれる塗料で屋根材同士の隙間が埋められることを防止する処理が必要ですが、この処理をしないと雨漏りが起きてしまいます。
3回塗装も縁切りも屋根塗装の基本の工程なので、この工程をしっかり守っている業者に依頼しましょう。
漆喰補修工事
工事が必要な症状・状況として、家を建ててから15年以上立っていたり、台風や雨の多い地域で暮らしている場合は、漆喰の剥離や瓦のズレなどが発生するので、漆喰の補修工事行う必要があります。
主に初期の施工不良や経年劣化によって、瓦屋根のズレや漆喰の剥離が引き起こされます。
瓦自体の耐用年数は30〜50年と長いのですが、漆喰に関しては約15年の周期でメンテナンスを必要とします。
定期的に屋根工事業者に見てもらうのがいいでしょう。
少額の依頼を定期的に行い信頼のおける屋根工事業者を見つけておくと、後々大掛かりな工事の際には、すぐに信頼できる屋根工事業者を選ぶことができるので、屋根工事の失敗を防ぐこともできます。
棟板金交換工事
コロニアルを止めている屋根のてっぺん部分の金属板が、経年劣化・自然災害によって固定していた釘が緩んでしまい、台風などの強風によって浮き上がってしまった場合は、放置していると雨漏りが起こります。
このような時は、棟板金交換工事を行います。
棟板金を固定するために打った釘が浮いてしまうことで、その隙間や穴から雨水が侵入して雨漏りになることは少なくありません。
また、棟板金を止めるための木材下地も重要です。
この素材が防腐処理されていなければ、すぐに腐食して建物に悪影響を与えてしまいます。
そのため、早めの交換工事が発生し余計な出費となってしまいます。
そのため、棟板金を固定するために固定力のあるビス止めに変更すること、木材下地は防腐処理がされているものにすることも同時に行いましょう。
さらに、屋根塗装を行う時に塗装だけでなく棟板金も一緒にチェックしてもらうことをおすすめします。塗装と棟板金の交換時期は、一般的に10年が目安といわれています。
これらの工事を同時に行うと、足場代も1回で済みますし、家のメンテナンス費用を抑えることができます。
雨樋交換工事
経年劣化や自然災害による破損や、ゴミが溜まって詰まることが原因で雨樋が機能しなくなることがあります。
このときも雨漏りが起こるので、雨樋の交換が必要になります。
あってはいけないことですが、ほかの工事の最中に悪徳業者の職人がタバコの吸い殻を雨樋に捨てていくという事例もあり、それが原因で雨樋の交換が必要になることがあります。
普通の会社からしたらあり得ないことですが全国で工事をしているとこういった話も信じられないですが聞きます。
追加工事を発注するために使う手口ですが、このようなことをする業者は避けたいものです。
また、家の近くに大きな木があると落ち葉による詰まりやコケの発生なども起こりやすくなります。
そのため、雨樋が詰まるリスクが高くなってしまいます。
ちなみに雨樋は、一度破損や詰まりが発生してしまうと雨漏りの発生率が高くなるので、定期的なメンテナンスが必要です。
火災保険・地震保険を使って無料で修理するパターン
申請方法についてはこちらをご覧ください
プロが教える!! 雨漏りや屋根修繕で火災保険(住宅総合保険)を使う前に覚えておきたい全手法
地震保険申請で保険金が受給できるまでの流れ
このカバー工法は、火災保険や地震保険を利用することができます。瓦や棟の破損や飛散などで屋根に被害が出た時には、火災保険や地震保険を利用することが可能な場合があります。
例えば、屋根の棟が風災被害で壊れた時には火災保険が適応され、保険金が満額近く支払われることがあります。一部の破損のために修理すると、工事費用のほとんどが足場の組み立てに使用されることになります。しかし、支給された保険金を一部の修理のみに使用するのはもったいない話です。多くの屋根は、一部分だけでなく全体が痛んでいることが多いので、火災保険を利用して耐久性のある屋根に変えてしまうという選択肢もあります。
工事した後でも保険金の事後申請は可能
それでは、火災保険が適用される可能性があったのに、先に工事をしてしまった場合は火災保険の事後申請はできるのでしょうか。
一般的には、火災保険の請求に関しては工事業者の見積書や修繕前・修繕後の現場の写真提出などが必要になり、事前に用意できる書類は先に提出することになります。
被害状況により必要書類が変わることがあるので、修繕前に保険会社もしくは火災保険を利用した修理に慣れている専門業者に確認しておきましょう。
では、すでに工事をしてしまった場合に火災保険の請求ができるのかという点ですが、実際に被害があって本来受け取ることができるものについては事後請求が可能です。
しかしながら、いつまでも請求できるわけではなく、実際に被害を受けていたことが立証できなければなりません。
事故が発生してから時間が経過すればするほど、事故との因果関係の立証は難しくなってしまいますが、しっかりと立証ができれば保険金は支払われます。
事後申請に必要な書類としては、
- 工事を行う前の写真
- 工事後の写真
- 工事業者が提出した見積書
- 罹災証明書(国の通達に基づいて市町村が実際にあった被害状況を確認して損壊状況を区分け・判定した後に発行する書類)など事故の因果関係を立証するものが挙げられます。
この場合、立証する証拠書類が不十分な時や経年劣化による被害と判断がつかない時などは、火災保険が下りないことがあります。
支払いポイントは事故との関連性
屋根の修理の場合は、
「建築してどれくらい経っているのか」
「事故との因果関係がはっきり立証されているか」
が保険金の支払いのポイントとなります。
保険に関する取り決めに関しては、それぞれの火災保険の約款に記載されているので事前にチェックしておくことをおすすめします。
約款全部を把握するのは難しいとは思いますが、保険金の請求に関しては
- 「事故発生の際には遅滞なく保険会社に連絡しなければいけない」
とされていることがほとんどです。
被害の状況が火災保険の対象になりそうな時は、すぐに保険会社や専門業者に相談しましょう。
保険金の請求は、事故が起きてから3年以内に行うのが一般的ではありますが、保険法とは別に各保険会社が請求期限を決めていることもあるので注意が必要です。
こちらも合わせて、契約している保険会社に確認しておきましょう。そして、念のため事故が起こった時はすぐに状況を写真に残しておくことが大切です。
記事監修
【一級建築士】登立 健一 一級建築士。全国建物診断サービスのwebサイト監修の他、グループ会社の株式会社ゼンシンダンの記事も監修。 |