公開:2018年2月7日 更新:2021年3月17日
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皆さんは新築の家を買う時やリフォームをする時に、どの場所を一番気にしますか。
キッチンやクロス、床の素材にこだわるという方は多いと思います。
その中で、見落としがちなのが屋根です。
住んでいる上ではあまり気にしない部分ですので、業者の提案のまま進めてしまうことが多々あるのですが、
そもそも住宅の歴史を顧みると、屋根の組み立てこそが最重要課題として考えられてきました。
日本の高温多湿の気候でも住宅が長持ちするように、そして台風や大雨から家の中を守るためには、屋根の材質にこだわることは大切なことなのです。
屋根の種類とメリット・デメリット
ではその屋根、どのような種類があるのでしょうか。各種類のメリット・デメリットとともに紹介していきましょう。
瓦(和瓦・洋瓦)
- 瓦(和瓦・洋瓦)
- 日本の伝統工法でもある瓦。粘土を使った焼きものを使用します。
耐久性の高さに秀でており、塗り替えが不要です。
また、厚み・重さもあるので、耐熱性・断熱性・遮音性にも優れています。
しかし、重量が重いことで工事の際には耐震性を考慮しなければいけないため、最近は軽量化が計られています。
スレート(コロニアル・カラーベスト・パミール)
- スレート
- 薄い板状の素材ですが、セメントに繊維材料を混合することで強化しています。
「カラーベスト」「コロニアル」「パミール」といった商品が特に普及していることから、それらの商品名で呼ぶことも多いです。
色・デザインが豊富で、軽量・安価であるというメリットがあることから、広く普及してきました。最近では、表面の塗装の耐久性・耐候性をさらに高め、自然らしい素材感を表現した商品なども登場しています。
以前はアスベストを原料としていたというデメリットがありましたが、現在生産されているスレートにはアスベストは使用されていません。
セメント瓦(プレスセメント瓦・コンクリート瓦)
- セメント瓦
- セメントと砂を原料とした瓦です。大きく分けて、プレスセメント瓦(厚形スレート)とコンクリート瓦の2種類があり、樹脂塗料で塗装をしているので施工性・衝撃に強いのが特徴です。
一般的な寿命は30年前後といわれていますが、早めに再塗装することで長く使用することができます。
金属屋根・トタン
- 金属屋根・トタン
- 亜鉛メッキ鋼板をトタンと呼びますが、
その最大のメリットは雨漏りが起こりにくいという点です。
それに軽量・安価ですので、急速に普及しました。
しかし、サビが発生しやすく、断熱性能が低いというデメリットがあることから、高温多湿の日本の気候にはあまり合いません。
そのため、トタン屋根の人気は下降しています。
ステンレス
- ステンレス
- さびにくいことから、海岸近くの家でよく使用されています。
高い耐久性、軽量、耐震性に優れているなどのメリットもあります。
しかし、屋根に使用されるカラーステンレスは表面が塗装されていることから、経年劣化により色があせてきてしまいます。耐久性は高く腐食することは稀ですので、色あせが気にならなければメンテナンスは不要です。
しかし、ほかの金属屋根よりもかなり高価になってしまうため、一般住宅ではあまり使用されない素材です。
銅
- 銅
- 銅板屋根は、厚さによって耐用年数が変わるという特徴があります。
0.4mmほどの厚みのある銅版を使用したり、下地の施工をしっかりしたりすれば、100年以上も持つといわれるほど高い耐久性がメリットです。
銅は時間が経つと緑青という変色が起こりますが、それ以降は大きな変化がなく長持ちします。
かつては銅の屋根はメンテナンス不要といわれていましたが、最近は酸性雨の影響により穴があいてしまうことがあるようです。
ガルバリウム鋼板
- ガルバリウム鋼板
- 最近よく聞くようになりました。
「アルミニウム55%・亜鉛43.4%・シリコン1.6%」という割合で構成されているアルミ亜鉛合金めっき鋼板のことです。
アルミニウムのメリットである耐食性・加工性・耐熱性・熱反射性の高さと、亜鉛のメリットである犠牲防食機能を兼ね備えているため、従来の鋼板よりも耐久性が高くなっていることから、屋根だけでなく外壁にも使用されます。
自然石粒付ガルバリウム(ジンカリウム鋼板)
- 自然石粒付ガルバリウム
- ガルバリウム鋼板と同じ製品です。商品名が違うだけなのですが、表面が細かい石粒でコーティングしてあるという違いがあります。
この石粒のおかげで雨が拡散されるので、雨音が気にならないという特徴があります。また、再塗装は不要ですが、断熱材が必要になることはあります。
アスファルトシングル(グラスファイバーシングル)
- アスファルトシングル
- もともとはフェルト紙にアスファルトを浸透させて製造しており、時代によってその製法が変化してきました。
現在は、不燃布やグラスファイバー(ガラス繊維)にアスファルトをコーティングするという製法を採用し、表面に傷がつかないように細かい石粒などで仕上げています。
アメリカでは住宅の80%以上の屋根に使用されているといわれるほど普及しています。
陸屋根(ウレタン防水・シート防水・FRP・アスファルト防水)
- 陸屋根
- 近縁増加傾向にあるのが、勾配がほとんどないことから、陸屋根と呼ばれている屋根です。
屋上部分がほぼ平面状になっている屋根のことです。
最近は、屋上庭園や太陽光発電用のソーラーパネルを設置するなどこの平面を利用した戸建住宅も多くなりました。
このように、屋上スペースを有効活用できること、そしてメンテナンスが容易であることがメリットです。しかし、築10年程度で点検やメンテナンスを行う必要があります。
施工業者の選び際のポイント
このように様々な屋根があるのですが、どの屋根がその家に最適かを見極める力のある施工業者と出会えなければ、無駄な出費がかさんでしまう可能性があります。
業者が勧める屋根材がその家に最適でない可能性もありますし、特定メーカーとの癒着によりそのメーカーの製品だけを提案してくる業者もいないわけではありません。
このような業者は利益率が高いメーカーと癒着することで安価な屋根材の提供が可能ではあるのですが、その後のメンテナンスが必要になるなど結果的に大きな損失になることがあるのです。
そのため、予算のみならず、将来的なことも考えて様々な角度から屋根の種類を比較・検討してくれる業者を探しましょう。
優良な業者とは、色々な屋根材のメリット・デメリットを細かく説明してくれます。
そのような業者は5~10近い屋根材を扱っていますので、依頼主と話し合いをしながら最適な屋根材を決めることができるのです。
そのため、多くの屋根材の工事の実績を持っている業者を探し出し、工事を依頼することが大切です。
屋根工事における火災保険活用術
新築時はともかく、修理をする時には条件が合えば屋根に火災保険を活用することが可能です。
「火事になってもいないのに?」と思う方も多いかもしれませんが、火災保険が補償してくれる修理は火事に限ったものではありません。
しかも、保険金が支払われるケースなのにも関わらず、保険金を請求していないというケースも多く見受けられるのが火災保険なのです。
火災保険が認められても支払う保険料は上がらない
しかも、火災保険は自動車保険のように保険を使うたびに掛け金が上がっていくものではありません。また、請求しない限り保険会社は動いてくれません。
そのため、火災保険に保険証書を確認し、「このケースだと保険金が請求できるかも」と思った時は、相談してみる価値はあるでしょう。
まずは、現在加入している火災保険の補償内容を確認しましょう。
多くの火災保険で、火事はもちろん、落雷や風災、水害・雪害などの自然災害による被害を補償しています。
特に屋根の修理では、風災が適用されて火災保険を活用できるケースが多いです。
当社団では、お住まいや建物をすみずみまで調査し、破損や劣化箇所を報告し、保険適用が可能かどうかを診断するサービス、ホームドックをで行っております。ぜひご活用ください。
法人の建物診断も行っております。事業者や法人の方はこちら。
・プロが教える!火災保険請求のコツとは?雨漏りや屋根修理で火災保険を使う前に覚えておきたい全手法を公開!
・自然災害で損壊した建物の修繕に対して、火災保険請求は正当な権利
風災とは、文字通り強い風で建物・家財が被害にあうことです。
火災保険では、その被害にあわせて被害金額を補償してくれることがほとんどです。
台風や突風、春一番のような強い風によって屋根がはがれたり壊れたりした時は、火災保険の補償対象になります。
この時注意が必要なのは、最大瞬間風速が毎秒20メートルを超える強風が対象になっているということです。
とはいえ、素人ではこの風速はわからないと思うので、強風で屋根に被害が出た時はまずは相談してみましょう。
ちなみに、火災保険の請求期限は「被害を受けた日から3年以内」となっていますので、その期間内に思い当たることがある場合は請求してみる価値はありそうです。
(3年以内に保険会社に申請することが必要という意味です。)
また、損害額が20万円以上でなければ受けられないという制限にも注意が必要です。(20万フランチャイズ)
火災保険の請求方法
では、自然災害により屋根に被害が出た時はどのように火災保険を申請すればよいのでしょうか。
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※この時、自分で保険会社に報告をすることもできますが、専門的な書類も必要になるので、火災保険を利用した修理に慣れている業者に協力してもらうという方法もあります。
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火災保険を支払う保険会社が、第三者機関に調査を依頼し、その被害額が適当かどうかを判断します。
そのため、公平な立場である第三者機関が調査することで保険金額を決定します。
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保険適用になるのかが決定する前に修理をスタートしても良いのですが、万が一実際にかかる金額が保険金より高くなってしまった場合は自腹で負担することになってしまうので、できれば保険金額が確定してから修理を行うほうが安全でしょう。
地震保険は活用できるのか
実は、火災保険のほかにも屋根の修理に活用できる保険があります。
それが地震保険です。
実は、火災保険は地震・津波・噴火など一部の自然災害は補償していないので、火災保険に付帯させる形で地震保険に加入していなければ、それらの災害による被害の補償はカバーされないのです。
地震は国が保険料・支払いを管理している
火災保険は民間の保険会社が運営・販売をしていますが、この地震保険は日本政府が関与しているという、保険の中でも特殊なものです。
というのも、地震・津波・噴火などの天災による被害は莫大になる可能性が高いので、民間の保険会社にすべてを任せると破綻してしまうリスクがあるからです。
そのため、地震保険はある一定の損害額を超えると日本政府が支払いを代行するということになっています。
地震保険は特殊な保険
地震保険では、地震・津波・噴火による被害が補償されます。
ここで注意しておきたいのは、地震を起因とする火災は、「火災保険ではなく地震保険で補償している」ということです。
火災保険という名前が付いているので、すべての火災を補償してくれそうですが、地震が原因で起こった火災は、地震保険を付帯していないと補償されません。
そのため、日本で大きな震災が起きた時には、度々この保険制度が注目されてきました。
そしてこの地震保険は、火災保険を主契約として付帯という条件で加入することになります。
つまり、地震保険単独での契約はできず、必ず火災保険とセットで加入することになっています。
火災保険は契約時に建物の評価額に基づき保険金額を決定しますが、地震保険はその火災保険の金額の30~50%の間しか契約できません。
そして、地震保険の支払い基準は「地震保険損害認定基準」によって定められていて、その認定基準から損害の程度によって「全損」「半損」「一部損」という3区分で保険金が決まります。
このように、屋根の損害で火災保険・地震保険を活用できるケースがあるので、必ず保険証書を確認しておきましょう。
記事監修
【一級建築士】登立 健一 一級建築士。全国建物診断サービスのwebサイト監修の他、グループ会社の株式会社ゼンシンダンの記事も監修。 |